松江での11月は、特に興味深い出来事がいろいろあった月だった。
まず、天長節はユニークな祝日であった。
おそらく、出雲のような祝い方をするところは、日本にはほかにないだろう。
この日は神道の祭日の形をとる。
どれもこれも見事な神輿が松江の大きな商家に飾られ、あるものは一団の男衆が、チョーサイヤ、チョーサイヤのかけ声勇ましく、駈けるようにして町中を担いでねり歩く。
聞くところによると、この古めかしい掛け声は、数世紀前に京都で起こったものらしい。
何か大きな建物が建てられていたとき、大工たちが材木をいっせいに引いたり、持ち上げたりするタイミングを合わせるため、裕福な施主の名を唄うよう命じられたのだそうだ。
だが、今日ではもとの言葉は忘れられ、チョーサイヤは祭りのときに大人たちが叫んだり、子供たちが遊戯のときに叫んだりするほかは、あまり意味がなくなってしまった。
御神輿の巡行のほか、太鼓たたきの一団が町をねり歩く。
松江にはそれぞれ町内固有の鼕があり、しかも相当昔から保存されている。
町内の若者が鼕を載せた一種の小さな山車を引き、鼕を打ち鳴らしつつねり歩くのである。昔は、ある町の鼕が別の町に入ると必ず悶着が起こったものだが、今ではどこへでも好きなところへねりあることができる。
以前は亥の子祭りにも太鼓たたきの若者同士で喧嘩がつきものだったらしい。
本気ではなく、おもしろ半分の小競り合いだったようだ。
(『ラフカディオ・ハーン著作集』第15巻、恒文社、1988年、467ページ)
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